人気記事ランキング

タグ一覧

catch-img

ティアキンとデザイン

少し前に発売されたnintendo switchのゲーム
「ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム(ティアキン)」が
世界中で大ヒットしていますが、
実際めちゃくちゃ面白く、
前作の「ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド(ブレワイ)」にも
ハマってたので、2作連続でまんまとどハマりしました。

このティアキンと前作のブレワイは、
いわゆる「オープンワールド」と言われるジャンルのアクションゲームで、
最終的にラスボスを倒してクリアするという一応の目的はあるのですが、
そこに向けてのルートは一本道ではなく、まっすぐクリアを目指すもよし、
急いでクリアを目指さず、クエストをこなしながら広大なマップ内を
ひたすら探索するもよし、ゲーム内のギアやアビリティを駆使したクラフト要素で
ずっと遊び続けるもよしといった感じの、
自由度が非常に高い、プレイヤーに遊び方が委ねられるタイプのゲームです。
(ちなみに自分はクリアを先延ばしして探索を楽しむ派)

ティアキンの場合、自由度が高い分、やることや覚えることも多いのですが、
遊び方をマニュアル的にテキストで説明する部分がとても少なく、
よくわからないまま、とりあえずでゲームを進めていくこと自体が、
いつのまにか操作方法や目的を理解するためのチュートリアルになっており、
やることや覚えることが多いのに、プレイする上でストレスを感じることが
ほとんどありません。
さすが世界のnintendoだけあって、そのへんのゲームデザインが抜群に優れています。

ゲームデザインといっても単純なグラフィックの綺麗さとかではなく
(グラフィックもめちゃくちゃ綺麗なのですが)、
「痒いところに手が届く、かといって、ゲームの手応えを損なうほどには親切すぎない、
絶妙なバランス」
のことです。

例えば、ティアキン(と過去のゼルダシリーズに共通)の一つの特徴として、
ゲーム内のダンジョンやほこらなどをクリアする「謎解き」の要素があります。
一見、クリア不可能かと思わせておいて、でも実は、画面内に置いてあるアイテムや
隠されたヒントなどの情報をうまく組み合わせればクリアが可能になります。

そのアイテムやヒントの配置の仕方がとにかく絶妙で、
・物陰に隠れて見えないけど、ある位置へ回り込むと見える。
・最初は意味のないアイテムだと無視していたが、
進めていくと使い方がわかってクリアできる。
・ヒントといってもテキストではなく、背景に馴染んだ図になっている。
、、、などなど。他にもたくさん。
よくこんなこと思いつくなー、というアイデアに溢れています。

あと、RPGのお約束としてよくある、
「○○○から話を聞き、○○○を探し、○○○の場所で、○○○しなさい」というような
テキストによる指示をタスク通りにをこなさないと行き詰まるという部分も少ないので、
そこも非常にストレスが少ない理由です。

この、テキストに頼らず、視覚情報でプレイヤーにヒントを与える作りは、
たとえ何気ないように見える部分でも、
制作側が思いもよらなかった動きをするプレイヤーの心理なども踏まえ、
あらゆる状況を想定した上での緻密な計算が必要になりますが、
それをあくまでゲームの楽しさに落とし込んでいるのが、ティアキンのすごさです。
しかもそれが画面の中に溶けこんだデザインとして自然に表現されているので、
「制作側の都合で仕方なく」というような、ゲームに没入する上でのノイズになる部分も
ほとんど見られず、世界観が損なわれることも一切ありません。

難しさのバランスも程よく、自分で謎を解いてクリアできた時の達成感が絶妙で、
しかも、テキストに頼らないゲームデザインだから年齢や国籍も問わないので、
世界中で大ヒットしているのも納得です。間口が広いのに、奥行きもとてつもなく深いのです。

ひるがえって、自分のやっている「広告デザイン」に当てはめて考えてみるに
本来、デザインも不特定多数の人に対して、
視覚情報を駆使して目線を誘導し、読まずとも見ればわかるものを目指すものです。

とはいえ、デザインを進めていくうちに、どうしてもテキスト内容に頼ったり、
心配から説明的になったり、はたまた目的を忘れて作りこみに偏ったりしがちですが、
何を足し、何を引けば、こちらの意図通りに理解してもらえるか、
ティアキンはそんな部分でも大いに気づきを与えてもらえるゲームです。

S.Y