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ブランドの素質を残した発想転換

最新のトレンド/話題について、でもあり、ファンづくりについて、でもあり、

ブランディングについて、でもある、プロレスの話。

4月6日(土)、日本最大のプロレス団体、新日本プロレスが

格闘技の殿堂とよばれるNYのM・S・Gこと、マディソン・スクエア・ガーデンで

超満員の観客を集めて興行を行いました。あまりピンとこないかと思いますが、

海外のファンに向けて、海外で興行をやること、 これは実はすごいことなんです。


プロレスには何度かのブームがあり、今は4度目か5度目のブームと呼ばれたりして、

ここ数年、「プ女子」と呼ばれる女性ファンが増えてるという現象が

メディアで取り上げられたりもしてるので、何となく、また人気があるのかなと

いう認識の方もいるかもしれませんが、

数年前まで、プロレス人気はどん底にありました。

というのも、これも今やピンとこないと思いますが、15年くらい前、

日本には格闘技ブームというのがあり、K-1やPRIDEといった、

真剣勝負が売りの試合が大人気で、そのあおりで、プロレスの人気が

低迷しはじめました。そこに焦りを感じた新日本プロレスも、

プロレス団体でありながら、格闘技ブームに乗っかろうとしました。

しかし、格闘技とプロレスは、見た目こそ似てても全然別モノで、

(誤解を恐れずに言えば、「スポーツ」と「スポーツをテーマにした演劇」くらい違う)

当然、失敗。

試合は中途半端になり、人気選手も辞めていって、業績も落ち、いつ潰れても

おかしくないような状況になってしまいました。

要は、焦って流行りの新しいことに手を出そうとしたら、本業の質そのものが

落ちてしまって、もとからのファンにまでソッポを向かれてしまったわけです。

そこで、いよいよ本当に危機感をもった新日本プロレスがあらためて行ったのが、

原点回帰。もともと質の高さには定評のあったプロレスの試合をしっかり見せ、

会場に来たお客さんを100%満足させる、という興行の原点に立ち戻ろうとしたのです。

ただし、ここで今までと大きく違ったのは、お客さんのターゲットを変えたこと。

従来のプロレスファンは、男性中心、というか男しかいなかったのですが、

発想を大転換し、女性やファミリー層にも届くように変えていこうとしたのです。

その中心にいたのが、バラエティー番組などでよく見る棚橋選手や、強面だけど

スイーツ好きという真壁選手など。

選手が自ら地方へプロモーションに行き、メディアにも積極的に露出し、

SNSで発信することで知名度を上げ、さらにコスチュームやグッズのデザインなど

にも力を入れることで、従来の「暗い」「怖い」「オタクっぽい」というイメージの

払拭につとめました。

当然、従来のプロレスファンからの反発は大きかったそうですが、

結果、この取り組みは成功し、「プ女子」という現象も生まれ、会場によっては

お客さんの約半数が女性で埋まるそうです。

さらに、コンテンツのネット配信。定額制の配信を強化して、いつでも試合を見られる

ようにしました。これにより、国内だけではなく、海外でも幅広いファンも獲得し、

今では契約者の約4割が海外だそうです。結果、プ女子を含めた

新しいファン層からの支持と、海外ファンからの支持、そして一度離れたものの、

盛り上がりを感じて戻って来た従来のプロレスファンの支持で人気が再燃し、

業績もV字回復しました。

今回のNYでの興行は、そういった経緯があって実現したものでした。


新しいことに挑戦することはいいことですが、もともと持っていた

素晴らしいものをおろそかにして、付け焼き刃で身につけた中途半端なものは、

やっぱり見抜かれてしまう。

求められている、一番自信のあるものを磨き続けるという原点を忘れず、

それをどういった層に、どうやって届ければいいかを考えながらブレずに少しずつ、

新しいことへの挑戦を続けていくことが、大事なのだと思います。


M.Y