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購入時想起と買い物マインド、マーケティングの潮流の話

最近、子どもの歯科矯正を検討するために3件の歯医者を回った。
私は小児歯科に行くと必ず歯磨きグッズを購入するため在庫をチェックするのだけど
歯ブラシは病院によって違う種類が在庫されていたが、
歯磨き粉はどこの歯医者も同じブランドを取り扱っていた。それは私もいつも選ぶブランドであり、「子どもの歯磨き買い足さなきゃ」と思ったときにまず頭に浮かぶブランドでした。

このように購入検討の対象として思い浮かべるブランドの集合体をエボークドセット(Evoked Set)という。

検討時に一番最初に思い出してもらえるブランドは強い。そもそも消費者の頭の中に思い浮かばなければ買ってもらえる確率がぐんと下がる。
そのため、エボークドセット(Evoked Set)に入るということはとても重視されている。
特にオンライン購入の場合は比較検討せず第一想起の商品をそのまま買うことが多く、
さらに、沢山の人に買われる商品が先ほどの歯磨きのように売場も獲得していく。
これによってシェアの差はどんどん広がる。
企画担当として、こういう強いブランドを創る仕事がしたいなと思う。

一方、買い手目線で見たときには
第一想起の商品をオンラインでスピーディに購入できることはメリットが大きい。
さらに購入後、私のブラウザにはさらにパーソナライズされた商品情報が集まる。
自分で多くのものの中から時間を使って選ばなくても、選択肢がいつも身近に選べる状況である。
「とっても便利!」
コロナ禍当初オンライン購入が生活のほとんどを占めるようになった頃はこう思っていた。

でも、コロナも長期化して最近、すごく思う。
”それってつまらなくない?”

Amazonも、YouTubeも、ニュースアプリも、全部私の好みに最適化されている。
自分に合っているものがすぐに見つかり、買い物の間違いはないけど、
冒険もないし、新しい出会いも少ない。自分がなんだか、狭くなったように感じる。

カテゴリーは全く違うが
そんな毎日を送っていると「棚貸し本屋」が流行っているというのが
消費者の気持ちの動きとして、なんだか納得できる。

◆渋谷〇〇書店
最近話題の、個人に棚を貸し出し「棚主」となっていただき、共同で運営するシェア型書店。
ヒカリエにオープン。ヨガインストラクターが運営するカラダ書店や、BTS好きの会社員がBTS関連の書籍を集める書店、各棚主の偏愛やこだわりを感じる小さな書店が並ぶ。

自分の頭の中にはなかった発想や世界、選択肢との出会いがある場所。
それも、”誰かが偏愛しているもの”として受け入れることの楽しさ。
自分だったらこんな本屋にしたいな、という妄想も膨らむ。

パーソナライズで”自分が好きな情報”に囲まれた”自分が心地よい環境”に慣れてきたからこそ、
次はもっと冒険性がある出会いが欲しい、
ウェブのクチコミから自分最適なものを選ぶのではなくアナログで見つけ出す楽しさを体験したい。
こういう気持ちの変化が現れた人って、絶対多くいると思う。

こういう気持ちの流れがまたマーケティングの潮流を少し変えていくのでは、とわくわくするし、
商品を世の中に出すお手伝いをするにあたり、
こういった様々な気持ちの変化や流れに敏感でいつづけ
大小問わず、潮の流れを読める人でありたいなと思う。

Y.U