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デザインに「求められる機能」vs.「製作側の思い」

来たる2024年、フランスのパリにて夏季オリンピックが開催されますが、

そんなオリンピックに関するニュースの中で気になる事例がありましたので、
ご紹介します。


2月8日、パリ2024オリンピック組織委員会は

オリンピックに関連するいくつかのデザインを発表し、

その中に各競技のピクトグラムがありました。


ピクトグラムといえば、前回大会である東京オリンピックの際、

開会式の中で全ピクトグラムを身体で表現するパフォーマンスもあり、
とても話題になりましたね。

そんな強い印象も残っていたので、
パリ五輪のデザインやいかに…と思って一覧を見た私の感想は、

「綺麗!...しかしこれはピクトグラムなのか..?」でした。


とても繊細で、お洒落感や洗練された印象はまさにパリ!
で素晴らしいのですが、瞬間的な分かりにくさ、
小さなサイズで見た時の視認性の悪さなど

マイナスな意味で気になる部分も多かったのが正直な意見です。


そもそもピクトグラムとは↓

・意味するものの形状を使って、その意味概念を理解させる記号

・事前の学習無しでも即時的、国際的にわかる伝達効果

By ウィキペディア(Wikipedia)


という前提があります。

有名なピクトグラムは非常口マークやトイレの性別標識、
車椅子マークなどがありますね。

マークだけで伝達が可能なので言葉の壁もなく、

オリンピックのような国際的な場では、非常に高い有用性を発揮します。

つまりピクトグラムには「即時的に、誰にでも分かりやすい」
という機能が求められます。


今回のパリ五輪のピクトグラムに関して調べていくと、

各ピクトグラムは「紋章」をイメージしており、

「対称軸」「地面の描写」「スポーツの表現」という
3つの要素で構成されているそうです。

競技のピクトグラムで人の形を使用しないデザインは、
過去のオリンピックを振り返っても今回が初めて。

非常に斬新で、過去に例のないものです。


そういった「新しさ」に関しては目を見張るものがあり、

むしろこの形を受け入れられない私が古いのか…?とも思いました。

が、開催国のパリでもこのピクトグラムに関しては賛否両論で

「わかりにくい」「ピクトグラムといえない」という声も多いとのこと。


ピクトグラムの定義やマークに求められる効果に対し、

これまでにない斬新性、オリンピックという祭典を華やかに彩り、
開催国の伝統や独自性を含んだ現代的なデザインという観点。

今回は後者に重きを置いたデザインだなと感じます。


モノをつくる上ではよく「求められること」と「制作者の思い」が
ぶつかることがあります。

もし私がアーティストであるならば、思いのままに形にして
表現するのがベターですが、仕事となれば必ずしもそうはいきません。

要求された課題をクリアし、さらにプラスでお返ししながら、
自分の思いもしっかりと乗せる。

うまくバランスを取るのか、ケースによってはどちらかに比重を置くのか...

このニュースを見ていて、そんな判断の位置を考えさせられました。


A.Y